Bacchus T-Standard、ステンレスフレットへ打ち替え

現在、MUGEN Blastersでメインで使っているギター Bacchus T-Standard (Telecaster Type)をメンテナンスに出していたのが別物ギターに変化して戻ってきた。

■Bacchus T-Standardというギター
Bacchus Tシリーズとの付き合いは、2009年にT-Master (Telecaster Type with P-90 pickup)と出会って数年間、メインギターで使っていた。Bacchus Tシリーズはとにかく弾きやすいので、P-90 Pickupではない普通のテレキャスターピックアップが搭載されたT-Standardの安い出物がないもを探していた。2015年初めに旧モデルT-StandardのUsedを手に入れて以来、パーツ載せ替えやメンテナンスをDIYしながらMUGEN Blastersでメインギターとして使ってきている。
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Bacchus Tシリーズの特徴は、「テレキャスターをガンガン使う上でムムムな所を全部直して日本人向け仕様にしました!」的な国産ハンドメイドで、主に5つのポイントがある。
・Fender オリジナルよりボディーが小ぶり。裏表にコンター(ボディーがえぐれている)があるので、小柄な日本人でもギターを抱えやすい。
・ボディー材がライトアッシュなので、ギター全体で2.9~3.4kg位で重くない。
・ネック指板の側面が少しだけスキャドロップ加工されているので、日本人の小さい手でもネックを握りやすい。
・ピックアップ切り替えスイッチやジャック形状など、オリジナルとは違う部品で使い勝手を向上させている。
・デタッチャブルネックだが、接合部分にプレートを使わない方式で、高音域も弾きやすくなっている。

■頼りたいリペアマンは大阪にいる
まだ自分では出来ない「ステンレスフレットへの打替え」を試したかったので、今回はプロフェッショナルのリペアマンに作業を依頼する。
ギターのリペア・メンテナンスってコストが掛かる。今まで12万のギターに15万のコストを掛けて改造・メンテナンスした事も…。リペアマンとの相性もある。効果もやってみないと分からない事も多い。今回は満を持して川崎から大阪までギターを送った。絶対の信頼を置いているリペアマン、数年前に大阪に戻ってしまったので、彼にギターを診てもらうのは久しぶり。

ギターを送った際に配送事故が発生したのだが、それは別のブログで。

■メンテナンスで依頼した内容
1) ステンレスフレットへの打替え(リフレットに伴う指板調整・ナット交換含む)
2) ピックガード製作
3) ボリューム・トーンのポッド交換
4) 全体チェック・調整

送ってから10日ほどでメンテナンス作業が完了。大き目の段ボールにハードケースが収まってギターが送られてきた。この梱包方法についても別のブログに書く。
前日夕方に大阪で発送された荷物は、翌日午前中には川崎市の自宅に配達完了していた。
夜、帰宅後に段ボールを開封し、10分程度、部屋の空気になじませてからハードケースを開ける。ピカピカのギターが登場。オイルフィニッシュに金属パーツが映える。こんなに綺麗だったっけ?
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暫し眺めてからネックを握る。少しフラットにしてあるチューニングを合わせて、ナマ音で弾いてみると、ボディーがより振動する様に変わっていた。自宅練習用のアンプ(Fender Blues Jr)にプラグインして音を出す。出力が高くなった?

以下、メンテナンスを終えて帰ってきたBacchus T-Standardの感想。まだ、ネジを緩めて色々な所を開けて覗くとかしていないので、あくまでも外見と弾いてみた後のコメントです。
一言でいうと、「前とは別物のギターに生まれ変わった」という感じ。

■見た目
・パーツがピカピカになっていて気持ちいい。
クロスで拭くだけでなく、たまには金属パーツを分解掃除してクリーナーを使って磨き上げれば、新品の様になって気持ちいいんだな、というのがよく分った。

・製作してもらったピックガードが素晴らしい。
前のピックガードは白黒の2Pで、オールローズTelecasterみたいな見た目だったので嫌だった。普通のTelecasterよりボディサイズが小さいので、市売品ピックガードで合わないと思ってたので、見た目だけの問題なのだが、マットブラック1Pに変更してもった。出来上がってくると、薄い1Pと思ってたら厚い1Pだった。1Pではあるが縁を斜めに面取りしてもらった。手が込んだ感じが出ていて高級感がある出来上がり。光の当たり具合で立体感が出てカッコ良い。ライブで照明が当たった時に、どう見えるかが楽しみだ。
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ライブでピックを落とした時の為に予備のピックを用意しておくのだが、色々試した結果、最近はピックガードに挟んでいる。今回、斜めに面取りを依頼したので、側面が斜めだとピックを挟みにくいかな?と考えたりもしたが全然大丈夫だった。かなりスムースに挟み易く変わった。ピックガードを5点止めにしてもらったのも効いている。
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・静電気ノイズでパチパチしない。
前のピックガードの時は静電気によるパチパチノイズが凄かったので、DIYでピックガード裏に銅箔テープを貼って対処していた。今回のピックガードも対応されているのか不明だが、全く静電気ノイズは出ない。完璧!乾燥した自室に置いておくと、ピックガード表面にホコリが集まるので、静電気は発生している様だ。裏に細工してあるのは間違いなさそう。

■生音の印象
・ボディがより響く様になった。
ステンレスフレットなのかブラスナットの効果なのか?組み込みなのか?何が効いているのか分からないが、ボディーが響く。家で弾く時はアンプからの音が大きくないので、生音やネック振動ボディ振動が良いと気持ちよく練習も進む。ギターを弾いているのが楽しい。

・巻弦を弾くとズドンとくる感じが気持ちいい。
これもネック・ボディが響く話だが、巻弦 特に1~7フレットを押さえた時にズドンとくる感じが好き。弾いていて気持ちが良い。

■ステンレスフレット
今回のメンテナンスのメイン。ステンレスフレット自体はFreedom製 SP-SF-01S STAINLESS FRET Speedyを使っている。
ステンレスフレットは通常のニッケルフレットと違って硬度があり、摩耗が少ないとされている。弦を抑える際、弦とフレットが当たる時の音も違う。弾き味にも出音にも影響する部分だ。
「ステンレスフレットがこのギターに合うのかはやってみないと分からない。」「やならいと一生分からない。」という事で、やってみた。
結果、テレキャスタータイプのこのギターのステンレスフレット化は成功だった。
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・運指がスムース。
ステンレスフレットに変えた先人の感想は「ヌルヌル」「ツルツル」「ピカピカ」というのが多い。指が滑りやすく、くすまないのでピカピカなのだ。リチャードは頻繁に弦交換をする方なので、錆びた弦で弾くという事はないのだが、新しめの弦を使っていてもニッケルフレットは摩耗するし、くすむし、滑りは良くない。
ステンレスフレットに打替えられたギターを最初にネックを握った時、スライドしてもそれ程ヌルヌル感は無いという印象だったが、10分位触っていたらヌルヌルしてきた。良い。ひっかかりが無くてビブラートやチョーキングがし易い。前ほど力を入れずに弾ける様になった。

・不得意だった事がやり易くなった。
ソウルやファンクのバッキングに出てくる 1-2弦 8フレット→10フレット→8フレットを人差し指のはらで押さえてスライドアップ&ダウンするフレーズ。前より音がしっかり出る様になった。以前は8フレットに戻る時の音が出にくかった。

■弾き味・演奏性
・弾きやすい。
今まで以上に弾きやすくなった。スムースなスライド、力を入れすぎずに音が出せる。チョーキングもピプラートもスムース。ステンレスフレットは演奏し易さでは圧倒的に優れていると感じた。
演奏性は抜群でリチャードには合っている。

・テンションが良くなった。
1~3弦のテンションがキツイのが気になっていたが、丁度良くなった。チョーキングの際にステンレスフレット効果でスムースになった以外に、ブラスナットに交換して正しく溝きりがされているからだと思う。効果てきめんだった。

■出音の変化
・音の立ち上がりが超早い
予想通り、というか思っていた以上に分かりやすく変化していて、びっくり。音の立ち上がりが早い。より歯切れの良いリズムが刻めそうだが、演奏の粗が目立つ。今までごまかしてきた部分を練習しないといけない。

・音が伸びる。
リフレットやフレット摺合せをした後には音が伸びる様になるが、ステンレスフレットのせいか、とても伸びる。

・よりアタック&パンチが効いた音になった。
コレが今回のリフレットの最大の賭けだった。ステンレスフレットのせいで出音がキンキンしたりカチカチした音になったらどうしよう!という不安。テレキャスタースタイルのギターだし、ライブやリハーサルで通常使うアンプ(JC-120)のBright SWはONだし、音質の変化がわるい方向に行かないか…。
結果、力のあるアタック音・パンチが効いたブリッとした音の粒、というイメージで自分のスタイルにあった方向に行ったので満足。フレットのカチカチ音も気にならない。

■ダイナミクスレンジが拡がった
・音量がアップした。
JC-120のボリュームの2.0目盛分の違いがある。かといってゲインが大きくて歪む事はないので、純に音量が上がった状態。DIYでピックアップ交換をした際に配線を間違えていたのか、ハンダが上手く出来てなかったのか、最初からポッドが壊れていたのか、ピックガード裏面に貼った銅箔テープが悪さをしていたか?

(2016/2/8追記)
ギターを受け取って数日後にリペアマンと電話で話した結果、音量アップ(に感じる?)のは「ピックアップの高さを調整したのが一番の要因だろう」という結論になった。フロントとリア両方のピックアップを高くした(弦に近づけた)との事。ピックアップを弦に近づけると音量はアップするが、近づけすぎるとピックアップの磁石が弦振動を殺してしまいサスティーンが悪くなる。音質も濁った感じになる。自分では適切なピックアップの高さにしているつもりでも、そうでは無かったという事だ。
ピックアップの高さ調整は、ドライバー一本ですぐに出来るDIY作業だが、良いポイントにセットするのは、なかなか難しいのだ。

・ダイナミクスの幅が拡がった。
音量アップも効いているのかS/N比が向上した。音の強弱を弾きかたでコントロールする時の幅が、かなり拡がった感がある。今までのダイナミクスの幅が倍になった感じ。ピッキングの強弱で出る音量の幅が格段に拡がりニュアンスをつけ易くなった。ボリュームのツマミを絞った時の音量差もハッキリ出るというか、ギターに余裕がある感じがする。
このダイナミクスによって、リズムギターを弾く時の力の入れ具合がかなりシビアになり、粗が目立つ。特にシングルノートで複数弦をヒットさせるリズムギターの際の力の入れ方が難しい。このギターを弾きこなす為に練習が必要そうだ。

・ノイズは非常に少ない。
フロントとリアのPickupはNordstrand NVT A3に載せ替えてある。アルニコⅢのこのパッシブピックアップの音色がお気に入りなのだが、ノイズが更に少なくなった様に感じている。拡がったダイナミックレンジをノイズで邪魔していないクリーンな感じ。メンテナンス前は電装系のどこかに不具合があったのだろうか?

■トーンの変化
・全てのピックアップ位置でトーンが変わった。
ステンレスフレットの影響だと思うが、低音域の真ん中くらいが厚くなって、低音域の低音側はカチカチした感じ。JC-120のBassとMiddleを1目盛あげて調整してみたが、以前の様なサウンドにはならず、バンド内での気持ち良いトーンは、今後探っていく感じ。1人でアンプから音を出すだけであれば、とても良いギターのトーンになった。気持ちいい。
DistortionやPhaserのノリが良くなった。一方で掛けっぱなしのChorusはもう少し強く掛けても良いかなと感じている。

・前より抜けが良い。
「抜けの定義」は難しいが、バンドサウンドの中で以前よりギターの音(粒)が聴こえて来るようになった。抜けてくる感じ。

■ブラスナットの効果
フレット打ち替え、指板調整に伴いナット交換も依頼した。素材については牛骨・ブラス・TASQなどの候補についてリペアマンと話し合い、ブラスを選択した。
2014年末までメインギターで使っていたMoon TE-255DN(Telecaster Type)にブラスナットが搭載されていて、このサウンドが好きだったので、同じ方向に行く事を期待して、今回もブラスナットを選択した。
質量があるので、ネックの響きやサスティーンに影響しているだろうし、開放弦以外でもトーンには影響を与えていると思われる。ブラスナットは金属素材だが、キンキンした音にはならずWarmなイメージ。
ブラス素材のデメリットは、見た目が劣化してくすんでくる もしくは 錆びてくるって事でしょうか。
ステンレスフレットの交換もあるので、どこまでがブラスナットにした結果なのかは不明だが、弾き味も出音もMoon TE-255DNと同じ様な所がある事を感じる。
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■総合コメント
今回のメンテナンスでリチャードのBacchus T-Standard はびっくりする程、別物のギターに生まれ変わった。コレはステンレスフレットの効果だけではなさそうだ。一体何が起こったのか?
手元にあるBacchus T-Masterの方を同じ内容でメンテに出しても、同じ結果にはならない気がする。あっそうだ、T-Masterは、今回リペアしてくれた彼がまだ東京にいる2009年頃にフレットの微妙な浮きを含めて全体調整で診てもらったんだった。

「特にネック・フレット周りのメンテナンスはこの人以外に出す先が考えられない」というリペアマンにお願いしたので心配はなかったのだが、こちらの予想を遥かに上回る出来栄えに感動すら覚える。フレット打ち込みやナット溝切りって、本当に大切。
次の弦交換までしばらくの間は、どのネジも増し締めなどもせず、弄らず、開けたりもせず、このまま弾きこんでみようと思っている。(次の弦交換まで10日間くらいか…)
反応が良くダイナミックレンジが広いギターに変わったので、これを弾きこなせると、ギターが上手くなると思う。

結果を出すには、リペアマンの技術だけではなく、メンテナンスの事前相談・メンテナンス中や完了後のやり取りでの意思疎通が大切。こちらがどういう使い方・弾き方をしているのか?普段使っている弦やピックを多めに同梱しておく、ジックリ診て貰う為に作業期間に余裕を持つ、などなど、上手くいった。以前は彼も東京に居たので対面でアドバイスを貰いながらリペアしてもらっていたし、彼が大阪に戻ってからも、一度だけ会いに行っているし。それでも、今回は「遠いし忙しいだろうから断られたらショック、、、」とビクビクしながらの依頼だった。
川中さん、神対応ありがとうございました。

関東にお住いの方で、彼にお世話になった方も多いと思う。既に彼を知っていて「また彼を頼りにしたいな」と思っている方は連絡してみると良いかもしれない。

Guitar Fact. KAWANAKA
大阪府岸和田市
https://gf-kawanaka.wix.com/repair-room/

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